今月の特集
インド株式市場動向((株)インド・ビジネス・センター提供)
インフレ率上昇で年初来安値更新も、強まる割安感
主要30銘柄で構成されるムンバイ証券取引所SENSEX指数は、前月5月31日終値16,417.57から3000ポイント近い下落となり、月末6月30日終値で13,461.60となった。月間で17%下落し、1年前の水準に戻ったことになる。
6月2日に16,000、9日に15,000、24日に14,000を割り、6月終値では13,500を割って安値引けとなった。月間でSENSEX全銘柄が下落となったが、特にインフラ開発大手リライアンス・インフラ、セメント大手ジャイプラカシュ・アソシエーツ、不動産大手DLF、この3銘柄は30%以上の下落となった。背景には、やはりインフレがある。業界の概算で原材料や労働コストを含めた建設コストは前年比50%上昇しており、これが収益を圧迫してきている。また当然のことながら金融引き締めが行われ金融各社が住宅ローン等の引き上げや逆資産効果で、住宅及びその周辺の消費は減速する。ムンバイ証券取引所のセクター別指標でも最も下落が著しいのは不動産指数で、70%近い下落となっている。つまり不動産セクターの株価は平均して4分の1程度まで落ちている事になる。
一方、前月終値と比較しマイナス圏にはなったが、製薬セクターは小幅の下落に留まった。最大手ランバクシーが、第一三共による買収が発表され乱高下する展開となったが、月間ではほぼ前月と同じ横ばいとなった。為替が対ドルでルピー安になっていることや、世界的な景気減速の中でも収益が安定しているなどの理由から、同セクターが支持されているようだ。
卸売物価上昇率は、6月14日基準日で11.42%と加速が止まらない状況となっている。国際原油価格の高騰とそれに対応した6月4日に実施した燃料価格引上げが急加速の主因である。この事態を受けてインド中銀はさらなる引き締めに動き、レポ金利、現金準備率の引き上げを実施した。「様々な対策を打っている。現在のインフレ高進は2ヶ月程度で落ち着く。」と政府関係者らは発言しているが、元凶である原油価格の動向は不透明である。一方、7月1日終値時点のSENSEX指数のPERは15倍台になっており、過去のクールダウンした相場状況と同レベルである。SENSEX指数12000台は、2006年春の調整前高値、2007年春の調整後下値であり心理的には大きな節目となるが、今後の展開はどうなるだろうか。
先日、インド政府が発表したインフレ調査で、基礎コモディティーの中では、鉄鉱石、綿花、牛乳、魚類、オレンジの5品目が物価高の原因であるとの見解を示された。ここで注目すべき点としては、この5品目の中に、物価が上昇すると社会的な不安を増大させる『穀物』が入っていないことである。エジプトのように食糧を輸入に頼るエマージング国は、デモ、暴動が起きるなど経済や社会全体混乱しているが、自給率が高く輸出規制も厭わないインドではこれらのことは起きにくい。一方、問題は鉄鉱石である。鉄鉱石についてもインドは豊富であり輸出国であるが、様々な工業製品に波及していくためである。今年の6月には、鉄鉱石輸出への15%課税をするなど本格的な規制に乗り出した。鉄鋼製品については業界への働きかけで対処している。鉄鋼製品の国内小売レベルで便乗値上げが散見されることから、鉄鋼業界サプライチェーン上での自主規制を勧告しながら対応している。今年のモンスーンにも異常は見られず、農作物の供給不足は発生しにくい。これらの状況からみて、原油高による各業界の物流コスト増による最終製品のインフレはあるにしても、12〜13%で概ね落ち着きその後は抑制されていくと考えられる。
米国を中心とした混乱や不透明感のある時期ではあるが、いずれの国内外の機関も、今年度のインドの実質GDP成長を7〜8%台としてみている。「減速して、7〜8%」この成長を冷静に客観的に見ることが重要なときではないだろうか。
株式会社インド・ビジネス・センター 須貝信一
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須貝 信一 氏 株式会社インド・ビジネス・センター 取締役 東洋経済『オール投資』で「インドTODAY」連載中 著書:明石書店『インドを知るための60章』他 |
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(2008年7月11日)


