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信用売りの活用

2019年07月26日

(1)信用売りを分類すると...

信用取引の利点の一つとして「売りから取引を始められる」ことが挙げられます。信用取引の売りは「下げで利益を狙う」ものですが、その用途はシチュエーションによって異なり、下記のように使い分けることができます。

  1. 自身が保有していない銘柄の下げを狙う「純粋な空売り(純カラ)」

  2. 保有銘柄が下げそうな時にリスクヘッジで行う「つなぎ売り」

  3. 異なる銘柄の買いと売りを組み合わせ、リスクを抑えながらサヤ取りを狙う「ペアトレード」

上記の中で少し異質なものが(3)のペアトレードです。ペアトレードは、一回の取引で大きな利益がでないこともありますが、リスクを抑えることができるため「少しずつでも利益を積み重ねたい」という方に向いている手法です。

「少しずつでも利益を積み重ねたい」という人はデイトレードに行きつくことが多いのですが、デイトレードは難易度が高く、失敗してしまう方も多いようです。個人の感覚で差はあるでしょうが、私個人の考えではデイトレードよりも難易度が低いと思います。

(2)ペアトレードの手順

さて、信用取引をしている方の中には、買い建ても売り建てもしている方がいますが、ただ買いと売りをしているだけではペアトレードになりません。ペアトレードの基本的な手順は下記の通りです。

  1. チャートを見て同じような動きをする2つの銘柄を探す

  2. 2つの銘柄の株価を使って倍率を算出、ポジションを決めて取引する

では、それぞれの手順を具体的に紹介していきます。

チャートを見て同じような動きをする2つの銘柄を探す

ペアトレードで使う銘柄は「同じ業種に属する2つの銘柄」を選ぶのがポイントです。これは下記のような考え方があるためです。

(例)自動車業界に属するA銘柄とB銘柄の株価構成要因

A銘柄の株価を構成する要因

= 景気などの全体要因 + 自動車業界に係る要因 + A銘柄固有の要因

B銘柄の株価を構成する要因

= 景気などの全体要因 + 自動車業界に係る要因 + B銘柄固有の要因

これは株価を構成する要因を簡略化して表したものです。これらの要因がどの程度の影響を与えるかは分からないものの、A銘柄を買いB銘柄を売った場合、理論的には全体要因と業界要因が相殺され、銘柄固有の要因だけが残るはずです。A銘柄とB銘柄の固有の要因はそれぞれ異なるため、そこに値動きの差(スプレッド)が生まれ、その差をサヤ取りできるという理屈です。トレードに使いやすい組み合わせとして、例えば下記のものが挙げられます。

ペアトレードに使いやすい組み合わせの一例

  • 大林組(1802)と清水建設(1803)
  • 横浜ゴム(5101)とブリヂストン(5108)
  • アドバンテスト(6857)と東京エレクトロン(8035)
  • キヤノン(7751)とリコー(7752)
  • 三菱UFJ(8306)と三井住友FG(8316)

色々な組み合わせを試しましたが、商社やビール会社はチャートの動きが全く異なっており、あまり上手くいきませんでした。商社は資源関連の事業が増え、ビール会社はM&Aなどにより様々な事業が増えたなど、同業種でも企業ごとにそれぞれ異なる特徴を持つようになったため、銘柄の個別色が強まり上手くいかなくなったと考えられます。そのほか、個別材料で大きく動くゲーム株やバイオ株も上手くいかないと思います。

アドバンテスト(上)と東京エレクトロン(下)のチャート

アドバンテストのチャート
東京エレクトロンのチャート

2つの銘柄の株価を使って倍率を算出、ポジションを決めて取引する

ここでは、アドバンテスト(6857)と東京エレクトロン(8035)で倍率を算出します。ある程度の期間の株価(終値)が必要ですが、株価はマルサンボードから取得することができます。

マルサンボードから株価を取る方法

倍率を算出する際はどちらが分子でも大丈夫ですが、株価の大きい方を分子にした方が分かりやすいと思います。取得したデータを使って、東京エレクトロン÷アドバンテストで倍率を算出し、グラフにしたものが下のものです。

東京エレクトロン÷アドバンテストで算出した倍率のグラフ

東京エレクトロン÷アドバンテストで算出した倍率のグラフ

所々はみ出ている部分はありますが、倍率は5倍から8倍を行ったり来たりしています。計算式から倍率が上に向かうときは「東京エレクトロンが有利」、下に向かうときは「アドバンテストが有利」の状況です。そのため、5倍に近付いたところは反転を予測して「東京エレクトロン買い、アドバンテスト売り」のポジション、8倍に近付いたところでは「アドバンテスト買い、東京エレクトロン売り」のポジションを取ります。実際にポジションを組んだ(a、b、c)と仮定した場合の損益は下記の通りです。

a.倍率が5倍に近付いたため倍率上昇を予測し、東京エレクトロン買い、アドバンテスト売り

日付倍率東京エレク
(8035)
アドバンテスト
(6857)
損益計

2017/2/2

5.33倍

株価11,440円で
100株買い

株価2,147円で
500株新規売り

2017/5/22

8.04倍

株価15,680円で
100株売り
+424,000円

株価1,950円で
500株買い返済
+98,500円

+522,500円

  1. 損益は手数料や金利等の諸経費は考慮していない
  2. 株価は全て終値を使用

b.倍率が8.5倍を超えたため倍率低下を予測し、東京エレクトロン売り、アドバンテスト買い

日付倍率東京エレク
(8035)
アドバンテスト
(6857)
損益計

2017/11/2

8.52倍

株価22,535円で
100株新規売り

株価2,645円で
800株買い

2018/1/5
(倍率のピーク)

10.17倍

株価21,875円
+66,000円
評価益

株価2,151円
▲395,200円
評価損

▲329,200円
評価損

2018/5/1
(信用期日到来)

7.87倍

株価20,780円で
100株買い返済
+175,500円

株価2,642円で
800株売り
▲2,400円

+173,100円

  1. 損益は手数料や金利等の諸経費は考慮していない
  2. 株価は全て終値を使用

c.倍率が急騰して8倍を超えたため倍率低下を予測し、東京エレクトロン売り、アドバンテスト買い

日付倍率東京エレク
(8035)
アドバンテスト
(6857)
損益計

2018/10/30

8.22倍

株価15,145円で
100株新規売り

株価1,843円で
800株買い

2019/4/25
(信用期日到来)

5.18倍

株価17,850円で
100株買い返済
▲270,500円

株価3,445円で
800株売り
+1,281,600円

+1,011,100円

  1. 損益は手数料や金利等の諸経費は考慮していない
  2. 株価は全て終値を使用

Bのケースは、最終的に倍率が低くなったため利益になりましたが、一時は思惑が外れて倍率が10倍を超えました。ここが損失のピークと考えられますが、決済した場合は約33万円の損失になります。損失ではあるものの利益と相殺されており、この部分がリスク低減に成功したところと言えます。

(3)実践する際のポイント

最後にペアトレードを実践する際のポイントをご紹介します。

ペアトレードを実践する際のポイント

ペアトレード実践の手順は前述の通りですが、手順以外にも成功させるためのポイントがいくつかあります。特に下記(1)と(2)は必ず守るべきポイントです。

  1. ポジションを取る時は、買いの金額と売りの金額が同じくらいになるよう調整してください。調整しないと株価の大きい銘柄の影響を強く受けるため上手くいきません。アドバンテストと東京エレクトロンのケースでは、東京エレクトロン100株(7/23株価17,795円)に対し、アドバンテスト500株(7/23株価3,330円)でポジションを組む感じです。

  2. 取引の性質上、一方のポジションは利益、もう一方は損失になることが多いですが、決済時は必ず2つ同時に決済してください。ペアトレードは、買いと売り2つの取引をワンセットと考える取引で、損益は買いポジションと売りポジションの損益を合算したものになります。利益の方だけ外すとペアトレードの意味を成しません。

  3. 買いポジションは、信用買い、現物買い、どちらでもOKです。ただし、信用買いは金利等の費用がかかるため、費用が気になる方は現物買いでポジションを組んでください。

  4. 信用売りの際は逆日歩にご注意ください。逆日歩は思った以上に大きな金額になることがあります。株主優待が人気の銘柄や配当利回りの高い銘柄、常に売り残高が多い銘柄などは逆日歩が付きやすいと考えられます。

ルール通りに売買しても上手くいかないこともありますが、ペアトレードは「リスクを抑えながら利益を追求する」という点で優れている売買手法です。興味のある方は是非お試しください。

(2019年7月26日 星記)